【コラム】交通事故加害者請求
2015.10.2
1|加害者請求とは

日本の自動車保険は、自賠責保険と任意保険の二つの保険で成り立っています。
自賠責保険に対する請求は、加害者請求と被害者請求の2種類があり、加害者請求は自賠法15条、被害者請求は自賠法16条で規定されています。
加害者請求は自賠責保険に加入している加害者が被害者に損害賠償金を支払った上で、その実際に支払った限度で自分の自賠責保険会社に対して、領収書その他必要書類を添えて加害者が保険金を請求する方法です。
加害者が請求する場合は「保険請求」となります。
加害者請求は、一般的に事故後に保険会社から連絡が入り、治療費や休業損害など任意一括対応が開始されます。
保険会社は、自賠責保険を担保に内払いを開始し、加害者請求として以下の4つのタイミングで自賠責保険から回収しています。
- 事故被害から1年を経過したとき
- 内払い損害額が120万円を突破したとき
- 示談解決したとき
- 被害者請求が行われ、任意一括が解除されたとき
加害者請求は、既に支払ったものの回収なので、当然ながら被害者請求に優先することになります。
これに対する被害者請求は、
- 加害者が任意保険に加入していないとき
- 被害者の過失が大きく、保険会社の対応が受けられるとき
従来は、上記の2つに限って、やむを得ず被害者自身が請求していました。
後遺障害を申請するときから、被害者請求を実地することを「戦略的被害者請求」と呼んでいます。
被害者請求では、自賠責保険を通じてNiro調査事務所が認定作業に入ります。
認定結果は被害者に通知され、同時に被害者の指定口座に自賠責の保険金が振り込まれます。
一方、保険会社に後遺障害診断書を渡して認定をお願いしたときは、保険会社を通じてNiro調査事務所が認定作業に入りますが、認定通知は口頭でされ、保険金が振り込まれることはありません。
自賠責保険金は、保険会社が握ったままの状態であり、これを事前認定と呼んでいます。
被害者請求は自賠法16条で被害者に認められた固有の権利なので、被害者がこの権利行使を決断したときには、すべて優先され妨害されることはありません。
2|加害者に任せる事前認定

事前認定とは、加害者側の任意保険会社を通じて後遺障害等級申請を行うことです。
これは、被害者側で申請を行うのではなく、加害者側で被害者の後遺障害等級の認定を行います。
実体を知ると非常に奇妙な申請方法ですが、この方法が一般的となっています。
事前認定は、被害者の手を煩わせることがないので、被害者にとって便利といえますが、必ずしも被害者に有利に運ぶ制度ではありません。
実際に次の事例がありました。
事前認定で等級を獲得された被害者が、弁護士に依頼後、事前認定書類を精査したところ、実は被害者に不利なことばかり記載された意見書を保険会社が提出していることがわかりました。
このような事例が起こっておりますが、普通は被害者が知ることはありません。
知らぬうちに不利にならないためにも、やはり交通事故専門弁護士に相談して、上級の後遺障害等級認定を得ることが賢明でしょう。
3|一括払い制度
一括払い制度も加害者請求の一種です。
加害者が任意保険に入っている場合、通常は加害者側の任意保険会社が自賠責保険の分も一括して被害者に賠償金を支払い、後で加害者に変わって自賠責に請求をします。
これを一括払い制度といいます。
この制度により、被害者は自賠責保険会社(または加害者)と任意保険会社に対する請求手続きが一本化されるという利点がありますが、任意保険会社との示談が進まない場合など、自賠責保険会社に対して被害者請求をした方が良い場合もあります。
4|加害者側の保険会社の対応
交通事故の被害に遭ったら、すべての加害者側の保険会社が親切に対応してくれるわけではありません。
保険会社の魂胆は、なにもかも保険会社の都合のいいように解決することです。